ソフトウェア受託開発ブログ「スモールスタートで始める製造現場のトレーサビリティとエビデンス管理」
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今年も検査不正のニュースが、いくつか報道されました。
製造現場における品質保証体制の強化については、経済産業省が2018年に発行したものづくり白書でも、IoTやAIなどを活用した検査結果のデータ化・見える化が有効であることが、事例を挙げながら提言されています(第1部第1章第2節-5「人手不足・デジタル革新が進む中での品質管理の在り方」)。
その中で紹介された強化案の例として、(ア)製品出荷前検査状況のデータ化なども含めた検査工程の自動化などを柱とした、人の手を介さないウソのつけない仕組みの導入、(イ)製品の個体管理によるトレーサビリティの導入、(ウ)品質データなどのサプライチェーン間での共有が事例とともに挙げられています。
今回はこの提言をもとに、当社の映像/FA/AI 連携プラットフォーム「FA Finder」を使って、“映像情報”を付加して構築するトレーサビリティやエビデンス管理システムを、簡単なものから大規模なものまでご紹介します。
データによる見える化に映像が加わることで、データだけでは得られなかった気づきや、不正防止力の強化が得られます。
1. BIツール+映像情報によるトレーサビリティ
BIツールを導入済みであれば、そこにカメラ映像を統合して映像を使ったトレーサビリティを実現できます。写真は、ウイングアーク1st株式会社のBIツールMotionBoardに、当社のFA Finderを使って実際に映像情報を取り込んだものです。ガントから、異常アラートが発生したタイムログをクリックすると、その時何があったのかを、瞬時に映像で確認できます。
2.遡り録画による工程管理とトレーサビリティ
2番目の例は、遡り録画を利用したシステムです。「すでに製造ライン上にカメラはたくさん設置しているが、撮りためているだけで活用ができていない」というお客様もいらっしゃいます。設置されているカメラで、遡り録画機能を使って比較的簡単に実現できる、工程管理とトレーサビリティを両立させたシステムを作ってはいかがでしょうか。
例えば、製品が完成品到着ゾーンに到着したことをトリガーに、製造ライン上に設置した複数のカメラから、その製品がそれぞれのカメラ前を通過した前後60秒(任意で設定)の映像をFA Finderが自動的に切り出し、対象となる製品の製造情報(ロット番号など)と紐づけます。すべてのカメラの映像は、FA Finderで同時に再生させることができます。これで、例えば特定のロットに不具合があった場合、その製品が製造工程で何があったかを、上流から下流まで一度に呼び出し、検証することができます。FA Finderは広域を監視するIPカメラでも、ライン近くに設置した小型カメラでも、メーカーを問わず切り出しと紐づけが可能なので、現在の設備を大きく変えずに実現できます。映像解析機能やAIとFA Finderを連携させることで、外観検査で不良品が検出された、という映像解析結果をトリガーに遡り録画することも可能です。
3.PLCとカメラを連携させた、トレーサビリティと映像エビデンス収集
PLCで製造機器を制御している現場では、前述の例をさらに拡張できます。PLCは、それぞれの製造装置に「持ち上げて」「原材料を投入して」などの指令を出します。FA Finderはその指令をトリガーとしてカメラに録画を始めさせたり、ズームアップやカメラ角度の変更を指示できます。こうすると、例えば原材料を投入する瞬間を確実に、最適な画角でとらえることができます。原材料投入時に異物が混入されていないことを確証するための、“映像”というエビデンスが自動的に取得されます。広域監視カメラと、ハイスピードカメラの両方があれば、高速で動くラインを高画質で捉えるとともに、FA Finderが材料投入時に周囲に誰がいてどのような作業をしていたかまでエビデンス映像を取得し、例1と同様に個別の製造情報と紐づけ、エビデンス管理とトレーサビリティを確立します。
4.検査もれ、不正を防ぐ検査体制の構築
このシステムでは、カメラ映像、製造情報、作業員管理情報、映像解析ツール、生産管理ツール等々、さまざまな情報をFA Finder上で紐づけ、連携させます。どの製品を誰がどのように検査をしたか、上流から下流まで工程を追いつつ映像を取り込み、必要によって顔認証などの画像解析を交えながらエビデンスを取得し、トレーサビリティを強化します。映像による作業者の確認から作業工程の管理、映像と生産情報を紐づけることにより、検査の質と信頼性が上がります。さらに、FA Finder上で様々なデータを照合し検査が正しく行われたことが証明されないと、次の工程に進めない、というところまで自動化ができますので、品質保証体制がより強固なものになります。
トレーサビリティに必要なエビデンス映像を簡単に取得、紐づけできるFA Finder
FA Finderは、カメラ映像を製造機器、見える化ツール、映像解析ソフト、製造情報、検査情報、などさまざまなFA機器、IT、AIと連携させるプラットフォームです。「映像」によるトレーサビリティやエビデンス管理を簡単に実現できます。メーカーやフレームレートが違うカメラを組み合わせて使うことも、さまざまなカメラメーカーの開発をサポートしてきた当社がサポートします。 撮影しづらい場所でも製造ラインを止めずに撮像可能か、試行錯誤しながら必要な画像を確実に撮影できる撮像環境の構築もお手伝いします。